昭和初期の主婦向け実用書に残されたメモに着目。実際に実験することで、当時の着物生活、美容事情を読み解き、現代ツールに残すと言う壮大で、誰の役にも立たない研究をしています。
それでも私はその”知って損も得もしない歴史”を日本全国、
いや、世界へ発信しています。

今、海外の人達の方が古き良き時代の日本文化の魅力に魅了されている。
東京浅草に日々立って、そう思うんです。
日本人は戦後から
古き良きに飽きてしまってアレンジを繰り返し、
元祖を忘れ、戦前の着物や美容はどんどん不便なモノになり、
不便を解消する便利グッズや新たな着付を提案するようになっています。
私はそれを少し寂しく思います。
それと同時に、当時戦争なんてなかったら
きっと今の人達みたいに当時の人たちは
自由に着物や美容を着こなしていただろう。
そんなことも想うのです。
だからこそ、戦争で途切れてしまったあの時の技術や暮らしを
日本人が完全に忘れる前に記録したい。

戦火をくぐり抜け、祖父と結婚し、私まで命を繋いでくれた大正5年生まれの
祖母のことが私は大好きでした。
20代で祖母宅を災害で失いました。
その家は私に昭和の一般家庭の一切を教えてくれました。
私には残せる記憶、体験がある。
この研究は祖母や戦争で途切れてしまった人たちが憑依したかの如く、
どんな破片からでも残したい。
そんな憑りつかれるほど昭和主婦に憧れる渡辺真由美という
発信に限界のある、たった一人の研究です。

もしこのメッセージや技術が届くならば、
映画、舞台、広告業界の方にこの技術を伝えたい。
「戦前の着物文化を、映像や舞台の新しい表現に。」
後世へ紡ぐチャンスを掴み取るその日まで、
この命ある限り、研究を続けます。

昭和家庭風俗研究家
渡辺真由美